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2015年08月11日

  • [東北]

いわき地域学会 「熊川稚児鹿舞」練習見学会

1991年度サントリー地域文化賞受賞者「いわき地域学会」主催の
「熊川稚児鹿(しし)舞」練習見学会に行ってきました。





いわき地域学会プロフィール

https://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_cca/detail/1991t1.html



1981年愛する郷土いわきについての
総合的な地域学をめざし、

考古学、地理学、文学、歴史、民俗学、植物学など

さまざまなジャンルの人々が集まって「いわき地域学会」が設立されました。

2014年、サントリー文化財団の「地域文化に関するグループ研究助成」に、

地域を奪われた伝統芸能の継承に向けた方策の研究とその実践

というテーマで応募され、厳正なる選考の結果、助成が決定しました。

サントリー文化財団研究助成

https://www.suntory.co.jp/sfnd/research/index.html


原発事故の影響で、住人全員がふるさとを離れて避難している

福島県双葉郡大熊町熊川地区。

この地域には、江戸時代から伝わる「熊川稚児鹿舞」が伝承されています。

しかし、鹿舞の衣装や道具は大津波で流され、

住民の多くがいわき市と会津若松市に分かれて暮らしているのです。


そんななか、震災翌年の2012年8月に「熊川稚児鹿舞保存会」が

活動再開に向けて動き出し、2014年7月、見事に復活を遂げました。


そうした経緯を「いわき地域学会」が記録し、
保存会の人たちと一緒に、

継承に向けての方策を探ってきました。


この日は、ふるさとを離れて暮らす人たちや応援してくれた多くの人たちに、

子どもたちが一生懸命練習に励む姿を公開する場を

「いわき地域学会」が提供したのです。

会場には一般の観客とマスコミ数社が集まっていました。


まずは、「いわき地域学会」代表幹事の吉田隆治さんから開会のご挨拶。

「文化による震災復興」を会の事業の柱に加えているとのこと。




最初は衣装をつけないでの練習です。

演じるのは会津若松市といわき市で暮らす、小学校4年生と6年生の2組の兄弟。

ふだんの練習は、両市で交代で行われています。



練習の間、鹿舞を長年調べていらっしゃる副代表幹事の夏井芳徳さんが、

身振り手振りを交えて、「熊川稚児鹿舞」の特徴を説明してくださいました。



続いて、衣装をつけて子どもたちが登場。

雌鹿(前から二人目)を3頭の雄鹿が奪い合う物語を表現します。



熊川地区に伝わる鹿舞独特の5色の尾。

舞いの動きにつれてさらさらと鳴り、とても綺麗です。



さっきの練習のときには登場しなかった

「野猿」と呼ばれる道化役が客席を湧かせます。

見ていると、さりげなく子どもたちに立ち位置を支持したり、

角にひっかかった「尾」をとってあげたり、細かく気を使っていて、

舞台監督の役目を果たしている模様。

でも、手にした「ささら」は・・・・。



舞いはかなり激しい動きもあり、衣装や頭は重くて暑くて重労働。

舞いの途中に短い休憩時間をはさみます。

一人の子どもに大人三人がかりで、団扇で扇いだり、水分補給をしたりたいへん。



そして、立派に舞い終えて、盛大な拍手を浴びた子どもたち。



2012年4月、私はいわきを訪れ、
吉田さんと夏井さんにお会いしました。

海岸部の会員さんが亡くなったり、被害を受けたりしたというお話を伺い、

胸が痛みました。


それでも、震災後、全国から多くの研究者が被災地にやってくるけれど、

ずっと地元で暮らしている自分たちにしかできない調査・研究活動を続けると

力強く話されていました。


今回の見学会では、「いわき地域学会」の皆さんが、

そのときの決意を実践されていることをはっきりと知ることができました。

2015年3月には、夏井さんが執筆された

『熊川稚児鹿舞が歩んだ道 -福島県双葉郡大熊町』

も「いわき地域学会」から出版されています。

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投稿者(島)

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