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2017年08月21日

  • [九州・沖縄]

「地域文化の未来を考える研究会」IN沖縄②
現代版組踊「肝高の阿麻和利」に聞く

20年30年後の日本に多彩で豊かな地域文化を引き継いでいくためには、

今、何をなすべきかを考える「地域文化の未来を考える研究会」で沖縄を訪ねました。


研究会2日目の7月23日(日)の午後、中高生によるミュージカル現代版組踊「肝高の阿麻和利」(きむたかのあまわり)へのヒアリングを行いました。


現代版組踊「肝高の阿麻和利」は2000年、勝連町(現うるま市)教育委員会の事業として始まった中高生による沖縄版ミュージカルです。

琉球王朝の正史では逆賊である勝連城の城主・阿麻和利をヒーローにし、地元の伝統芸能をふんだんに取り入れた内容が評判を呼び、17年間に17万人を動員。

このノウハウを生かした現代版組踊が、沖縄県内のみならず本土にも広がっていて、〝奇跡の舞台〟と呼ばれています。


まずは、演出家の藏當(くらとう)慎也さん。



藏當さんは二代目の演出家。中学・高校と「阿麻和利」に出演し、高校3年のときに志願して初代演出家の平田大一(だいいち)さんの補佐を経験。

6年前に演出を引き継いだ、現在28歳の若手演出家です。

 「現在の出演者数は180人を越え、200人に迫ろうとしています。

  学年が上がっていくにつれて、少しづつ大事な役を経験する仕組みになって

  いるのですが、人数が増えたために、下積みが長くなっています。

  また、僕たちが出演していたころは劇を創って行く過程だったけれど、

  今はほぼ完成してしまっているので、創造する喜びをなかなか味わえない。

  今の子たちのモチベーションやテンションをどうやって維持していけばいい

  かが現在の課題です。

  今度、中学生だけで『かっちんカナー』を上演するのは、この問題を解決

  するためのチャレンジなんです。」


続いて、「あまわり浪漫の会」会長の長谷川清博(せいひろ)さんと、同会事務局長の長谷川加代子さん。




















お子さんが第1回公演に出演され、父母の会を結成。

3年目に教育委員会の予算がなくなったとき、長谷川会長は父母の会が主催者になって公演を続けようと決意しました。

「お金がないという大人の都合で、本気で頑張っている子ども達に公演はでき

 ないとは言い出せませんでした。 

 入場料収入だけで続けられるように、私たち大人もやる気を出したのです」

「子どもを使ってお金儲けをしている。そんなことを言う人もいました。
 経理の経験はありませんでしたが、税理士さんを雇ってきちんとして、 団体

 としの体裁をまず整えようと思いました」

と話して下さったのは、事務局長の長谷川加代子さん。


ご自分たちのお子さんはとっくの昔に卒業しているけれど、地域の子どもために頑張り続けていらっしゃいます。

その後、練習風景を見学し、フィナーレの一部を披露していただいたのですが、すっかり夢中になってしまって写真を撮るのを忘れてしまいました。

返す返すも残念無念。

前から2列目の中央、黒のポロシャツの男子と赤いTシャツの女子は、阿麻和利とその妻、百度踏揚(ももとふみあがり)。

7月10日に8代目のヒーロー&ヒロインとしてデビューしたばかりとは思えない、とても堂々とした演技でした。


そして最後にヒアリングをしたのは、初代演出家の平田大一さん。

平田さんはプロデュースにも長け、関東公演、ハワイ公演を実現させ、「阿麻和利」を全国区に育てた立役者。

2010年、沖縄県の文化観光スポーツ部の部長就任を機に舞台を離れ、その後2017年6月まで沖縄県文化振興会理事長を務めました。

20代前半から地域おこしと人づくりが人生のテーマだったという平田さん。

30歳で「肝高の阿麻和利」の演出を任されたときから、自分がいなくても動くチームづくりを目指していたそうです。

これからの地域文化活動において大きな課題になりそうな後継者問題、世代交代を30代のうちに意識して、40代で実現させてしまったことに驚きました。

平田さんの次なる目標は、沖縄の文化・スポーツ・観光を産業として振興させ、感動産業で地域を活性化すること。

前日に話を伺った「琉球國祭り太鼓」と同じく、周りがみんな無理だということを実現してきた平田さんなら、この大きな夢も実現しそうな気がしてきました。

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投稿者(島)

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