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2018年04月05日

  • [中部]

地域文化の未来を考える研究会IN浜松

20年30年後の日本に多彩で豊かな地域文化を引き継いでいくためには、

今、何をなすべきかを考える「地域文化の未来を考える研究会」で、

2018年3月5日から6日、浜松市を訪ね、ヒアリング調査を行いました。

(研究会詳細は、沖縄県での研究会を紹介するブログをご参照ください)


浜松市内には4件ものサントリー地域文化賞受賞者がいらっしゃいます。

一番手は、2014年に受賞された「峠の国盗り綱引き合戦」の浜松側の皆さん。

左から、現在の綱引き合戦の実行責任者である山本 功さん、

第1回綱引き合戦の責任者だった高木 久則さん、

第1回目から事務局を務めていらっしゃる井上 保典さん。

峠を隔てて隣接する浜松市の最北端・旧水窪町と長野県の最南端・旧南信濃村が、

互いの領土を賭けて峠で綱引きをするというユニークな催しです。

勝ったほうが負けた側に、1メートル国境を動かせるというルールのもと、

「長野に海を!」「静岡に諏訪湖を!」を合言葉に30年近く合戦が続いています。

綱引きの詳細は、地域ナビ「大人の遊び 峠の国盗り綱引き合戦」をご覧ください。

さぞや面白おかしく、楽しく活動されているのだろうと考えていたのですが、

あにはからんや。

もともとは隣町同士の交流を目的として始めたイベントだったのですが、

少子高齢化と過疎で綱引きをする人が足りなくなり、

地元外の人たちに応援を頼まざるを得なくなったこと。

合併してそれぞれ浜松市と飯田市になり、両市の市長が大将役として

参加するようになったために、マスコミの注目も高まったのですが、

それに煽られて勝敗に拘る傾向が強くなってきたそうです。

交流の精神が見失われかけていることへの困惑が感じられました。

続いてのはヒアリングは、浜松まつり凧揚げ保存会会長の斉藤 正さん(左から2人目)、

浜松まつり規格統制管理部幹事長の伊藤安男氏さん(左から3人目)、

浜松市観光コンベンションビューロー事務局の成瀨暢子さんと鈴木貴裕さん(両端)。



浜松まつりはもともと浜松の中心市街地で行われている祭りでした。
御殿屋台の引き回し、町衆が町内を練り歩く練り、

初子の誕生を祝う凧揚げの3本立てで、6~70町で行われていました。

それが、合併による浜松市の拡大とともに参加する町が増え、

現在は173町が参加しています。

祭りに参加している人口、面積は、おそらく世界一とのこと。

そうしたなか、現在、最大の課題になっているのは、

浜松に流入してきた新住民からの「うるさい」という苦情

練りの場所や時間を制限するなど、様々な対応を迫られています。

これは都市部の祭りにおいては、どこでも頭を痛めている問題かもしれません。

翌日は、午前中に公益財団法人浜松交響楽団(以下、浜響)の皆さんに

ヒアリングを行いました。


左から前理事長の田村滋治さん、元理事長の鈴木不二さん、

昨年、理事長に就任された岡部比呂男さん、理事の竹林 昇さん。



浜響の最大の特徴は、浜松青年会議所(以下、浜松JC)が設立したオーケストラだということです。

経営や組織運営に長けたJCメンバーやそのOBが運営を担い、

楽団員は音楽に専念できるという、アマチュアとしては

たいへん恵まれたオーケストラです。
これまでに特に困ったことや大変だと思ったことは何もなかったけれど、

むしろ、今が正念場の時かもしれないとおっしゃっていました。

というのは、昔に比べて現役JCがどんどん多忙になり、参加・協力が減少して

きたため、昨年ついに、創立以来の楽団員である岡部さんが理事長に就任され、

楽団員による自立したオーケストラへの道の舵取りをゆだねられました。

最後にご登場いただいたのは、横尾歌舞伎保存会の皆さんです。

左から、浜松市文化財課保護活用グループの戸田 剛さん、

定期公演の司会や広報を担当されている高須登志江さん、

事務局、会計を担当されている高井 克昌さんと会長の高井 勇さん、

運営委員長で義太夫・三味線を担当されている田力 剛さんです。

平成10年に高井勇さん、克昌さんのお二人が当時の保存会役員から

バトンを手渡されたとき、横尾歌舞伎は他の多くの農村歌舞伎と同じように、

高齢者と子どもばかりの小さな集まりでした。

高井さんたちが編み出した3年間で横尾歌舞伎の一通りを体験するシステムの

お陰で、現在では、日本一メンバーが多い農村歌舞伎の一座となり、

年に一度の公演日には、引佐地区全200戸から2日間で延べ300人以上が

お手伝いに集まり、まるで地区をあげてのお祭りのようです。

公演の様子は、地域ナビ「びっくりぽん!の横尾歌舞伎」をご覧ください。

ただそれでも、子ども達の数が減ってきているうえに、

せっかく高校生まで育てた子も、就学や就職のために町を離れてしまうのが、将来にわたっての心配の種だそうです。


浜松でお話を伺った4件のサントリー地域文化賞受賞者の皆さんは、

今、それぞれに新たな現代的な課題に直面されていました。

それでも、皆さんがこれまで発展を続けてきた背景には、

浜松市の豊かさ、浜松っこの知恵と独創性、団結力、

行政や企業に頼らない自立心と金離れの良さなどの様々な美点があり、

こうした美点は時代の変化にも関わらず、

今も脈々と受け継がれていることも感じました。

だから、きっと、浜松の地域文化は問題を乗り越えていくだろうなと、

とても心強く感じたのでした。





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投稿者(島)

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