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2019年04月22日

【動画あり】プレミアム・ミニトーク (東京)
第1回「生物と芸術のあいだ」を開催

 サントリー文化財団の設立40周年記念事業の一つ、「プレミアム・ミニトーク」417日に東京の八重洲ブックセンターで開催しました。

プレミアムミニトーク 福岡伸一 三浦篤 「プレミアム・ミニトーク」は、サントリー学芸賞の受賞者など第一線の研究者が専門を越えて対話し、その楽しさを読者の方にも共有してもらえる場を提供したいと、書店と協力して開催します。

 東京での第1回には、2007年に学芸賞を受賞された福岡伸一先生三浦篤先生に登場いただきました。今回のテーマは「生物と芸術のあいだ──芸術は無生物か」で、これはもちろん福岡先生の受賞作のタイトル『生物と無生物のあいだ』をアレンジしたものです。三浦先生が研究する画家のマネは、過去の名画を摸倣した作品を生み出したことでも知られますが、今回のタイトルもまさしく「マネ」。

 生物と芸術というまったく違う分野ではありますが、動的平衡やDNA、フェルメール、マネなどを切り口に、二つの意外な共通点について語っていただきました。

動画はこちら

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福岡伸一氏

 DNAが二重らせん構造であり簡単に自分をコピーできるということは、20世紀最大の発見と言われる。しかし一方で、生物は絶えず変わりながら動き続けていること(動的平衡)も重要だ。生物が生きているということは、常に自分自身の一部を壊しながら、つまり「過去」を崩壊させながら、「未来」を先取りしている。そういう点では生物と芸術は共通している。

 芸術作品はそれ自体は静止した存在だが、優れた作品の中には、「現在」、「過去」、「未来」の時間が描かれている。フェルメールは常に作品の中に時間を描いている。『青いターバンの少女』は振り向きざまに視線を投げかけ、『牛乳をそそぐ女』の牛乳はずっと流れている。写真であれば実際にはそのようには撮れない。

三浦 篤氏

 現代では「コピー」とは悪いものだと考えられがちだ。しかし芸術の歴史では、過去の優れたものをコピーして伝えることはすばらしいという考えが主流だった。おそらく18世紀ごろから、芸術家はオリジナリティを出さないといけないという傾向になってきた。

 私はマネを研究しているが、この画家はオリジナリティ信仰が行き渡った近代の画家であるにもかかわらず、過去の作品をコピーしている。過去の作品を解釈し、そこに少しだけオリジナリティを付け加えている。実際のところほとんどの芸術は、模倣しながらも自分の個性を出しているのが実態だ。そういう意味では、マネは現代のクリエイター達の先駆的存在であり、また、生命の原理を実践している画家ともいえる。

 模倣やコピーをおとしめる必要ななく、そこから可能性をつむいでいくことが大切。芸術というものは特別な人がやっていると思われがちだが、みんな摸倣することから始めているということを、学生にもよく言っている。

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 会話の中には、科学的な世界の見方が芸術に与えた影響や、現在の技術が芸術に対して出来る貢献など、聞いていてなるほど、と思う発見が盛りだくさんで、あっという間に時間が過ぎていきました。

 参加者も熱心に二人の話を聴き、「とても贅沢な時間だった」との感想をいただきました。当日の様子は近日中にビデオでも公開予定です。

本書店で販売されていた福岡先生、三浦先生の書籍を、多くの方が手に取られてていました。

次回のプレミアム・ミニトークは大阪の梅田蔦屋書店で5月18日(土)14時から開催予定です。

【参加方法・詳細はこちら】柴田元幸×互盛央「ことばの力」

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投稿者(典)

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