• 地域文化ナビ

2014年12月10日

  • [東北]

ケーナの響く里 福島県川俣町

2014年10月11日土曜日、コスキン・パレードに参加するために、

福島県川俣(かわまた)町に行ってきました。

アミーゴデ川俣.JPGのサムネイル画像

         川俣町の子どもたちによる「アミーゴ・デ・川俣」の演奏

コスキン・エン・ハポン活動紹介

https://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_cca/detail/1993t1.html



川俣町は、福島市から南東に車で約1時間、

阿武隈山地の西斜面につながる丘陵地帯にあります。

人口は1万4千人余りで、電車は通っていません。

この町で行われている日本最大の中南米音楽の祭典、

「コスキン・エン・ハポン」は

1993年にサントリー地域文化賞を受賞されています。


私が川俣町を訪れるのは今回で2度目です。

記念すべき第40回の「コスキン・エン・ハポン」を見て、

コスキン・パレードにも参加するのが今回の目的です。


朝9時、集合場所の小学校グラウンドには、

2000人近い町の人々が集まっていました。

色とりどりの民族衣装が壮観です。

「コスキン・エン・ハポン」が始まったのは1975年のことです。



中南米音楽の愛好者たちが集まり、

本場アルゼンチンのコスキン市で開催されている

世界最大の中南米音楽の祭典「コスキン祭り」の

日本版を開催しようということになり、

コスキン市と同じように山懐に抱かれた川俣町がよかろう、

ということになったそうです。

6000メートル級の山々が連なるアンデス山脈と

阿武隈山地はかなり違うように思うけれど、

それはさておき。

第1回目の出演者は13組だけだった音楽祭も、

現在では全国各地からプロも含めた

200組以上の演奏グループが集まる

日本最大の中南米音楽の祭典に発展しています。

ところが、2011年3月、東日本大震災とそれに続く原発事故の影響で

川俣町は大きなダメージを受けました。

そんな中、全国の中南米音楽愛好者、

コスキン・エン・ハポンを通じて繋がった大勢の川俣ファンから

あたたかい励ましの声が届き、

義捐金や慰問など支援の手が差し伸べられました。

地域が育てた文化によって全国とつながり、励まされ、

川俣の皆さんは、全国の人々に感謝と、

川俣の元気を伝えるために、

震災の年も音楽祭を開催することを決意したのです。

文化と地域の力を見せつけたこの出来事によって、

2011年にサントリー地域文化賞特別賞を贈呈しました。

https://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_cca/detail/2011t3.html


今回ご紹介するパレードは、

中南米音楽は演奏できないけれど、

自分たちも何らかの形で「コスキン・エン・ハポン」に関わり、

盛り上げたいと考えた町の人たちが企画し、

1995年にスタートしました。

町の人たちが身に着けている民族衣装は、

アルゼンチンからプレゼントされた2組の民族衣装から、

町の裁縫自慢のご婦人たちが型紙を取り、手づくりしたものです。

昨年に引き続き、今年は奥さんとお嬢さんも伴って参加された

駐日アルゼンチン大使や、川俣町長もポンチョ姿です。

         

放射能汚染のため、川俣町に避難してきている

隣の飯舘村の3つの小学校の生徒たちも参加していました。

いよいよパレードのスタートです。

老人ホームのお年よりも、車椅子に乗って参加しています。

羽織っているのは、ドテラではなくてポンチョです、念のため。


子どもたちは、中南米音楽の竹笛=ケーナを吹きながらパレードしていました。

「コスキン・エン・ハポン」開催事務局の皆さんは、

「ケーナの響く里づくり事業」にも取り組み、

町内の小学4年生全員に、無償でケーナを提供し続けています。

川俣町では1997年から小学校4年生の

正規の授業でケーナを教えているため、

今ではなんと、川俣育ちの28歳以下の住民は

全員、ケーナを吹けるのです!

放課後、ランドセルを背負った小学生が、

ケーナを吹きながら下校する姿が普通に見られるとか。

(でも、それって、普通じゃないですよね?!)

「コスキン・エン・ハポン」の日だけではなくて、

川俣町は、本当に年中ケーナの響く里になっているのです。

さて、町を挙げてのこのパレード。

マッチョなハーレーダビッドソン野郎や、

乗馬クラブの皆さん、


手づくりの山車も参加しています。


でもなんと言っても圧巻は、

フレアのたっぷり入ったロングスカートの裾をひらめかせ

舞い踊る女性たち!!

                            (写真提供:川俣町) 

私も混ぜて頂いたのですが、

ネイティブ・カワマタンの見様見真似だから、

一人だけ必死の表情です。

見物人がたくさん集まっているところでは、

アルゼンチンの民族舞踊を輪になってダンス!

町の中心部を約2キロ練り歩き、パレードは終了。

参加者には、名物ケーナ・パンと牛乳、

手づくりストラップが配られました。

午後からは、コスキン・エン・ハポンの本番です。

会場になっている公民館の前庭には、

観客や出番を待つ出演者同士が歓談したり、

練習したりするスペースが設けられています。

中南米の衣類や楽器などを売るお店や、

トルティーヤやエンバナータなど、

中南米の食べ物を売るお店もあります。

中南米の音楽や踊り、衣装、食べ物を

住民挙げて楽しみ、愛する川俣の人たち。

本当の意味での地域からの国際化、

異文化理解の姿がここにあると思いました。

ステージで繰り広げられる音楽祭の様子も

ぜひお伝えしたいところですが、

そちらは是非、実際に行って、見て、聴いて来てください。

ただし、1日目のプログラム終了は午前3時、

2日目の終了は午前2時半という、

とってもハードでディープな音楽祭。

体力と覚悟が必要とされます。

やっぱり、川俣町は、どこか普通じゃないのです。

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投稿者(島)

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