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2014年01月10日

  • [近畿]

湖北の秋を訪ねて 江北図書館

本年度サントリー地域文化賞受賞者の滋賀県長浜市に江北(こほく)図書館を訪ね、その後、館長の冨田光彦さんに、湖北の秋をご案内していただきました。

サントリー地域文化賞受賞者プロフィール

https://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_cca/detail/2013c2.html

江北図書館.jpg

江北図書館は100年以上の歴史を持つ私立図書館です。

東京にできたばかりの西洋式図書館で勉強しながら、苦学の末、弁護士になった杉野文彌氏が、郷里の青少年にも勉学の場を提供したいと考え、1902年、私財を投じて設立したものです。

公立図書館が少なかった当時、全国に90館余りの私立図書館が開設されましたが、その多くが姿を消し、現在残っているものは10館程度。

その多くが元大名や企業、宗教団体が設立したもので、個人の志によって建てられ、100年の風雪を乗り越えてきたのは、江北図書館だけだといえます。

杉野氏の志に賛同した多くの人々が、非常に高価な書籍を寄贈してきたため、図書館には希少で貴重な書籍や文献が数多く保管されています。

蔵書.JPG

近年は大型の公立図書館も周辺地域に完成しましたが、江北図書館は地域の図書館として、そこまで足を伸ばせないお年寄りや子どもたちに対するサービスにも心を配っています。

キッズ.JPG

杉野氏亡き後、この図書館を地域の人たちの中心となって守ってきたのが、地元の名士であった冨田館長のお爺様とお父様。それを冨田さんが引き継ぎ、三代にわたって、図書館を守っているのです。

「お爺さんの時代は家もずいぶん豊かだったようですが、病院や女学校の建設とその運営にお金がかかってしまい、親父の頃にはの雨漏りも直せないような状態の中で図書館を守っていかなければならなかった。本当に大変だったみたいです。」

とおっしゃる冨田さん。

冨田家は、460年余りの歴史を持つ造り酒屋さんです。

七本槍.JPG

合併によって長浜市の一部になってしまいましたが、図書館がある木之本町は古くから北陸と近畿、東海を結ぶ結節点の町として栄え、古い家並みも残っています。

その木之本町と湖北の寺院を訪ねる前に腹ごしらえ。

銘酒「七本槍」の飲み比べをしながら、滋賀県名物の鮒鮨や鰊の粕漬けなどをご馳走になってしまいました。

お酒.JPG

  

   

      酒飲みにはたまりません!

鮒鮨.JPG

まずは冨田家のお向いにある木之本地蔵院。

空海、最澄、菅原道真、足利尊氏、豊臣秀吉が参拝していたり、国の重要文化財が7つもあったり、やたらと由緒のあるお寺です。

木之本地蔵尊.JPG

かえる.JPG身代わり蛙を奉納します。このお寺に住む蛙は、信者の眼病を治してくれるようにお地蔵様に願をかけて、片目をつぶって暮らしているそうです。

この後に訪ねたのは、石道寺、渡岸寺、鶏足寺、戸岩寺。

どのお寺にも、国宝や国の重要文化財の観音さまや菩薩さまが何体もあってびっくり。

このあたりは「観音の里」と言われているそうですが、文化財がごろごろしている、という感じなのです。

聞くところによると、滋賀県は国宝と重要文化財の数が京都府・奈良県に継いで全国で3番目に多いとか。

ところがここ湖北地方では、住職が常駐していないお寺が多く、そうしたお寺では地域の人々がずっと仏様とお寺を守ってきたそうです。

戦火(浅井VS織田)に焼かれそうになった時、村人たちが仏様を地中に埋めて守ったという言い伝えがあるお寺もあります。

立て板に水の見事な説明をして下さった初老の男性に伺ってみると、40戸ほどの集落で、365日毎日交代で2人がお寺に詰めているとのこと。

それも完全なボランティアで。

ああ、そうなのですね。

江北図書館が100年にわたって守られてきた背景には、こういう地域の文化的な土壌があったのですね。

境内の深まりゆく秋の景色を眺めながら、湖北の歴史と文化の豊かさをしみじみと実感しました。

もちろん、食文化も含めて。

紅葉.JPG

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投稿者(島)

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