- 地域文化ナビ
2014年10月01日
- [中部]
3年ぶりの開催!女人救済の儀式「布橋灌頂会」
今年度サントリー地域文化賞受賞「布橋灌頂会」が3年ぶりに開催されるということで、9月20日(日)に富山県立山町芦峅寺へ行ってきました。
◆地域文化賞プロフィール&動画
https://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_cca/detail/2014c1.html
あの世へと橋を渡る女人衆
布橋灌頂会は霊山立山が女人禁制だった江戸時代に、極楽往生を願う女性たちを救済するために営まれた儀式。「この世」と「あの世」との境とされる橋を渡りきると、死後に極楽浄土に至ることが出来ると信じられてきました。明治初期の廃仏毀釈により行われなくなっていましたが、1996年の国民文化祭富山において約130年ぶりに再現され、現在は3年に1度開催されています。
お天気が心配されていましたが、当日は晴天!
朝7時、富山駅から富山地方鉄道に乗り、千垣駅へと向いました。
レトロな列車がなんとも素敵!
田んぼのにおいが車内まで香ってきそうな懐かしい風景を眺め、遠い昔の登校時を思い起こしながら、電車に揺られること50分。
どこか懐かしい雰囲気の千垣駅に到着しました。
もうこれだけでなんだかワクワク!です。
そしてバスに乗り10分、会場に降り立ちました。
目に飛び込むものは、山、山、山!
見事なまでの存在感を放つ立山連峰を麓から見上げ、朝から心が洗われた気分。マイナスイオンとはまさにこれだ!と感じる瞬間。
私のボキャブリーでは伝えられないほどの感動を味わいました。
3年に1度の開催日ということで、芦峅寺の皆さんは大忙しです。
男性陣は会場設営や安全確保のための立ち番、婦人会の皆さんは女人衆の着付けに郷土料理の支度。また、地元の中高生たちも朝からイスを丁寧に拭き、本番に備えます。
大きな釜からはおいしそうな煙とにおいが・・・
開会式で披露された立山権現太鼓の音も、朝から広大な大地に鳴り響いていました。
太鼓を叩いたのは立山町職員と地元のお子さんだとか。素晴らしい迫力でした。
そしていよいよ布橋灌頂会の本番。
この美しい光景を一目見ようと本当に大勢の方が駆けつけていました。
崖へと溢れんばかりの人、人、人!3800名もの人が県内外から集まったそうです。
10時20分、閻魔堂での懺悔に始まり、一連の儀式が執り行われます。
堂々と構える立山連峰と真っ青な空を背景に、仏教音楽「聲明」と雅楽の調べが響く中、白装束を着た女人たちが真っ赤な布橋を渡る姿はなんとも荘厳。なにか我々も精神世界へと導かれるような光景でした。
200を超える応募から抽選で選ばれた85名が参加。首都圏からの注目度も高まっています。
儀式の後、私も目隠しをして皆さんと一緒に橋渡り体験に参加してきました!
布橋は全長45メートル。敷板の数が108枚(人間の煩悩の数)など仏教的な吉数が折り込まれています。
そして、「この世」と「あの世」の境とされる布橋に、この日だけ三筋の白布が敷かれます。
この白布は浄土へ至る白い道を意味しているとのこと。
そしてこの上を、目隠しをしながら一歩ずつ歩み進めます。
目隠し越しに撮影した渾身の一枚!
五感のひとつが目隠しによって奪われることで、不思議とまわりから聞こえてくる音楽がすっと身体に染み込んでくる感覚となり、心が落ち着きます。
そして橋を渡りきり、目隠しをとると、目前には神々しい立山連峰。
「・・・」 皆さん息を呑みます。
まさに壮観。
ただただその姿に圧倒され、心奪われる瞬間でした。
布橋灌頂会が約30年ぶりに復活し、こうして定期的に開催されるようになった背景には、立山信仰が根づく芦峅寺で暮らす皆さんの存在があります。
住民数360人の芦峅寺集落は全員協力体制。立山信仰の象徴である布橋灌頂会が行われるこの日のために、準備を重ねます。そして、当日。
「朝起きて、空を見たらね、(お天気が良くて)私、あぁ良かった・・・って涙がこぼれおちてきたんよ」
と婦人会会長の照代さん。
それほどまでに、芦峅寺の皆さんは、この布橋灌頂会を大切に大切にしてらっしゃいます。そして、そんな愛情をもった皆さんの温かさが随所から伝わってくるのです。
併催の「ごっつぉ祭り」では、婦人会の皆さんが作ってくださった山菜のお料理をいただきました。
・・・優しい味で絶品!
作り手の気持ちが伝わる最高に幸せなお料理でした。
江戸時代の精進料理。写真中央は名物の"やきつけ"!
こちらも名物"つぼ煮"。外で食べるとほっこりします。
布橋灌頂会の次回開催は3年後ですが、立山の自然や歴史、そして芦峅寺の皆さんの温かさを感じに、是非一度足をお運びください!
◆立山博物館HP
http://www.pref.toyama.jp/branches/3043/home.html
布橋をはじめ、布橋灌頂会が行われている会場はすべて立山博物館敷地内です。
立派な展示館に加え、「立山曼荼羅」の世界を空間的に表現したまんだら遊苑やかもしか園もあります。