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2016年04月13日

  • [四国]

中国人留学生たちと訪ねた「土佐絵金歌舞伎伝承会」

中国人若手研究者の皆さんとの旅二日目は、香南市赤岡町の「土佐絵金歌舞伎伝承会」を訪れました。


◆2000年受賞 高知県赤岡町(
現・香南市)「土佐絵金歌舞伎伝承会」
https://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_cca/detail/2000cs3.html



山々に囲まれる馬路村からバスに揺られること90分。
旅行二日目のこの日は、海辺のまち、香南市赤岡町にやってきました。

赤岡のまちを歩いていると・・・
突如として立派な建物が!


どーーーーんと構えています。物凄い迫力です。


弁天座」です。

明治の頃、地元の旦那衆によって作られた弁天座は、かつて大衆演劇や映画を見にくる人で賑わう赤岡町のシンボルでした。時代の波に逆らえず一度は取り壊されましたが、復活を願う多くの地元住民の力によって、平成19年
に再建。まちの娯楽の場として、再び輝きを取り戻しているどこか懐かしい雰囲気のある芝居小屋です。


中に入ると、留学生たちからは思わず、「わぁーーー!」と声が漏れます。

入った瞬間、圧倒される贅沢な空間。客席から舞台がとても近いことも魅力です。


この豪華な会場で「やーん、よう来てくれて!」と明るく出迎えてくれたのは、「土佐絵金歌舞伎伝承会」の横矢佐代さん。午前中は横矢さんをはじめ、赤岡の皆さんにお話を伺いました。


弁天座のあるここ赤岡町には、古くから町内の各家に「絵金」の芝居絵屏風が伝わってきました。
「絵金」とは絵師・弘瀬金蔵の通称。江戸末期に高知城下に生まれた彼は、土佐藩家老の御用絵師・林洞意として腕をふるいましたが、狩野探幽の贋作を描いた疑いをかけられ、御用絵師の職を失います。その後、藩内をさまよい赤岡に辿り着いたとき、地元の旦那衆に目をかけられ、町絵師として赤岡に数々の作品を残しました。


絵金の作品「花上野誉石碑 志度寺」(所蔵:高知県香南市赤岡町本町一区、提供:絵金蔵)

こうして赤岡の地に残された絵金の芝居絵屏風は、年に一度だけ、毎年7月の第三土日に開催される「土佐赤岡絵金祭り」で公開されています。そして、この絵金祭りで"屏風に描かれた歌舞伎の演目を町の人間で演じてみたい"と地元有志が立ち上げたのが「土佐絵金歌舞伎伝承会」です。



木材が贅沢に使われていて素敵な雰囲気です。


絵金歌舞伎の出演者はもちろん全員が素人。手探り状態ではじめた伝承会ですが、涙あり、笑いありの歌舞伎として地元で大評判です。ここ弁天座での公演は毎回満員御礼!フランス・リヨンでの公演も成功させている同会は現在レパートリーが10本もあるというから驚きます。

土佐絵金歌舞伎伝承会と弁天座はいまや香南市の顔。行政が「歌舞伎のまち・香南市」を掲げるほどの活躍ぶりで、赤岡だけでなく多くの周辺地域住民を巻き込みながら、舞台を作り上げているとのこと。これからも元気な団体でありたいと、明るく前向きに未来を語る皆さんの表情がとても印象的でした。



そして、昼食をとりながら伝承会の歌舞伎DVDを鑑賞し、弁天座の見学ツアーへ。芝居小屋の裏側をたくさん見せていただきました。

本格的な回り舞台の説明を受けたあとは、


熱心に話を聞きます。


奈落の底へ移動し、


意外と広いです。


再び舞台へ!


ポーズもばっちり。


他にも、花道や客席、控え室など、たっぷりと舞台の仕組みについて学びました。また、弁天座の皆さんのご厚意で、なんと歌舞伎の衣装を着せていただけることに!

嬉しいサプライズにみんな笑顔です。
手際よく着付けてくださり・・・


着付けのために地元の皆さんがスタンバイしてくださっていました。ありがとうございます。


あっという間に、中国人歌舞伎俳優集団の誕生です。
今回は男性の李さんがお姫様になり、女性は町娘と白浪五人男になりました。
留学生からは「歩きづらいし、かつらも重い!」との本音がポロリ。一方で「客席から見ると役者さんたちは綺麗だけれど、美しさを手に入れるのには我慢が必要ですね」とも。着てみてわかる、役者さんの気持ち。とても貴重な経験をさせていただきました。


「こんな大きいお姫様は見たことないね~」とみんなで大笑い。塩井正利さん、横矢佐代さん、入野節雄さん(写真中央下)をはじめ、お世話になった皆さんと。


大興奮の着付け体験のあとは、弁天座の向かいにある「絵金蔵」へ。
ここでは赤岡に残っている絵金の絵屏風23点が保存されています。日頃は夏の絵金祭りで公開するために大切に保管されており、一部を除きこれらは非公開。代わりに常設されているレプリカからは、絵金の代名詞"おどろおどろしさ"を体感できます。暗闇で見る血みどろの絵屏風は、圧倒的な存在感と異彩を放っていました。


町の古い米蔵を改装し、平成17年に開館した絵金蔵。趣があります


そして昼下がり、赤岡のまちをぷらぷら。
創業400年以上の老舗和菓子店「西川屋」さんに・・・


土佐藩御用達の御菓子屋だったとのことで、資料館も併設されていました。


西川屋名物の「ケンピ」。かたくてかたくてかたい。


レトロな雰囲気が漂う雑貨店「おっこう屋」さんに・・・


掘り出し物がたくさん見つかりそうなワクワクする空間です。


見渡す限りのしらす!!!
「三浦屋」さんだけで何億万匹いるのでしょう・・・


どろめ(生しらす)祭りでも有名な赤岡。磯の香りでおなかが鳴りそうです

 
赤岡に溢れる風景は、故郷に帰ってきたような、なんとなく懐かしい、心がホッとするものでした。


12月には「冬の夏祭り」が開催される横町商店街。歩行者天国にし、コタツを並べます。ユニークな取り組みがたくさん。


こうして全行程が無事に終了。楽しい時間はあっという間です。日本の文化の豊かさと、それを守り、育てる皆さんのパワーに魅了され続けた一日でした。
あたたかく迎えてくださった赤岡の皆さま、本当にありがとうございました。


今年の「絵金祭り」は、7月16日(土)、17日(日)に開催されます。
年に一度の"本物"解禁日。絵金を見に、そして絵金歌舞伎を鑑賞しに、ぜひ赤岡を訪れてみませんか?

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投稿者(栗)

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