- 事務局通信
2016年12月07日
「震災後の日本に関する研究会」で「災後」の熊本を視察
サントリー文化財団では、2011年3月の東日本大震災の後、「震災後の日本に関する研究会」を立ち上げ、「災後」の日本をどのように築いてゆくべきかを議論してきました。研究会の成果は2014年2月に『「災後」の文明』として出版し、東京では公開フォーラム(2014年5月27日)も開催しました。
その後も継続して「災後」の社会を考えるため、年に一度メンバーが集まるフォローアップ研究会を行っています。今年は熊本県や各自治体のご協力のもと、11月21日から22日にかけて、4月に発生した熊本地震の被災および復興状況の視察をしました。
その後、滞在先のホテルで研究会代表の御厨貴氏が、自ら委員を務める「くまもと復旧・復興有識者会議」の取り組みについて報告し、続いて、いつ何処で災害が起きても不思議ではない日本において、過去の経験を活かし、どのように「災後」の社会を生きていくのかについて、メンバーで議論を行いました。
熊本県益城町を中心に復興状況の視察
県下最大の仮設住宅が集まる益城町テクノ仮設団地
プライバシーを維持しつつ、住民同士が交流しやすい住宅の配置を行い、敷地内に集会場が設けられるなど、阪神淡路や東日本といった過去の震災経験を活かした施設運営がされていました。
「潮井の湧き水」として知られる水源のある潮井神社
潮井神社は布野田川断層上に位置し、今回の地震でも神木が倒れるなどの被害をうけました。水源の水量には大きな変化はなく、むしろこれまでよりも多くなっているという報告もあるそうです。
もともと断層があることによってここに水が湧いていたという関係があり、今回境内に出現した断層は、水源と断層の関係を伝える貴重な自然遺産としての活用が検討されています。
現在、断層を保護するためにビニールシートがかけられています。
地域の守り神として親しまれてきた益城町の木山神宮
本殿が全壊し境内に大きな被害を受けましたが、文化財指定をうけていないため公的な補助が望めず、いまのところ再建のめどは立っていません。
しかし、地域の人々が集うコミュニティの核としての神社の役割を、今回の地震で再認識したという禰宜の矢田幸貴さんは、再建に向けて地道に取り組んでいく決意を語られました。
阿蘇山を背景に。大きな被害をもたらした地震ですが、日本の美しい風景はその大地の長年の営みによって生み出されていることが今回の視察でよくわかりました。交通や宿泊施設も通常営業にもどりつつあり、次回はゆっくり熊本の自然と文化を堪能する観光に訪れたいと思いました。