- 事務局通信
- 地域文化ナビ
2017年08月21日
- [九州・沖縄]
「地域文化の未来を考える研究会」 IN 沖縄①
「琉球國祭り太鼓」に聞く
20年30年後の日本に多彩で豊かな地域文化を引き継いでいくためには、
今、何をなすべきかを考える「地域文化の未来を考える研究会」で沖縄を訪ねました。
琉球國祭り太鼓の練習を見学(於;沖縄市泡瀬公民館)
同研究会には、代表の飯尾潤氏(政策研究大学院大学教授)、顧問の御厨貴氏(東京大学名誉教授)のほか、 青木栄一氏(東北大学准教授)、小川さやか氏(立命館大学准教授)、小岩秀太郎氏(全日本郷土芸能協会事務局次長)、坂本誠氏(NPO法人ローカル・グランドデザイン理事)、長尾雅信氏(新潟大学准教授)鴋澤(ばんざわ)歩氏(大阪大学大教授)、宮本直美氏(立命館大学教授)がメンバーとして参加。
政治学、教育行政学、文化人類学、マーケティング、経済史、社会学の研究者と全国の地域づくりと伝統芸能をサポートする専門家の方々に集まっていただきました。
研究会ではまず、これまで幾多の困難を乗り越えながら、息の長い活動を続け、発展を続けているサントリー地域文化賞受賞者に、困難を乗り越えてきた秘策と、さらなる発展のための次の一手を伺うヒアリング調査を実施。
その第1弾として、沖縄を訪問しました。
1日目の7月22日(土)は、 沖縄市で1982年に結成された「琉球國祭り太鼓」へのヒアリングを行いました。
「琉球國祭り太鼓」は、太鼓を打ち鳴らしながら踊る沖縄の伝統芸能エイサーを、現代的にアレンジした〝創作エイサー〟の団体です。
今から35年前に、〝創作エイサー〟を始めたのが祭り太鼓なのです。
通常は2~3個しか使われない大太鼓を50個以上打ち鳴らし、伝統エイサーでは太鼓を打つことができない女性や子どもも迎え入れたことから人気を呼び、沖縄県内だけでなく、全国、世界で公演活動を行い、県内8支部、県外40支部、海外28支部、総勢2500人余りのメンバーを擁しています。
トップバッターは、地域の仲間を集めて「琉球國祭り太鼓」を創設した目取真(めどるま)武男さん。
守るだけではなく、時代の感動を呼び起こすような新しいものを
取り入れることが大事だと思います。
そしてその感動は地域だけではなく、世界を舞台に広がることを
願っています。
民俗芸能だからと言って、地域だけに閉じこもっていては駄目なんです。」
後継者についての質問については、次のような答えが返ってきました。
「いい組織は、リーダーがいなくても続くと思います。
私はメンバーは誉めて、誉めて、誉める。そうすれば人は育つ。
やる気と能力があると信じたら、高校生でも支部長を任せます。」
兄の武男さんが「琉球國祭り太鼓」を旗揚げしたときから一緒にやってきた目取真邦男さんは、学生時代から伝統エイサーに打ち込んでいました。
そして、時代によって違う音楽や踊りを取り入れてきている。
伝統エイサーも以前はずっと創作し続けていたんです。
今では創作エイサーが100団体以上あります。
エイサー全体が活気づき、途絶えていた伝統エイサーが復活したところも
あるし、伝統エイサーと創作エイサーの共演も珍しいことではありません。」
事務局長の伊賀典子さんは祭り太鼓の魅力に惹かれて25年前に沖縄に移住。演者として引退した後は裏方に徹して、若いメンバーたちを支えてきました。
「この25年間を振り返ってみても、特に困難なことってなかったんです。
武男さんが突拍子もなく大きな夢を次々に追いかけるので、
それを実現するのは大変でしたけれど、困難ではなかった。
たとえば、今から20年ほど前に3000人のエイサーページェントをやろうと
したときは、地区の青年会以外はエイサーをほとんどしていなかった時代。
でも実現することができて、それが現在まで続いています。
まわりから絶対に無理だと言われていたことも、今まではなんとなく
全部実現してきたんです。
それは、何かを守ろうとか、組織を大きく発展さえようという目的が
なかったからなんじゃないかと思います。
個々の夢を追いかけているうちに勝手に広がって、
やりたいことをやってきた結果が今なんだと思います。
翌23日(日)の夜、祭り太鼓の練習を見学に行きました。
この日は、8月6日に開催する「1万人のエイサー」に出演する一般参加者を、午後7時から9時まで指導した後で、メンバーの練習が始まりました。
皆さん、仕事があるので、集まって練習ができる日曜日の夜は貴重な時間。
私たちが参観させていただくことを聞いて、わざわざ衣裳に着替え、エイサーの前に演じられる悪霊を払う獅子舞と、代表作の「ミルクムナリ」を演じてくださいました。
冷房のない体育館なので、全員汗びっしょり。
なかでも、獅子舞の衣裳を着て、飛んだり跳ねたり、転がったり、まるで本物の獅子のような動きを見せていた獅子舞の二人は物凄くたいへんそうでした。
貴重な練習時間、お邪魔をして本当に申し訳なかったのですが、メンバーの皆さんはずっと笑顔で、我々の質問にもどんどん答えてくださいました。
これぞ、「琉球國祭り太鼓」の皆さんがが最も大切にしている沖縄の心「迎恩」の精神なのですね。