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2017年10月18日
- [東北]
「地域文化の未来を考える研究会」IN福島③
「F.M.C.混声合唱団」と「いわき地域学會」に聞く
研究会3日目は郡山市に会議室を借りて、福島市に拠点を置く
「F.M.C.混声合唱団」といわき市の「いわき地域学會」の
皆さんからお話を伺いました。
最初にお話を伺ったのはF.M.C.混声合唱団。
1947年に結成され、今年創立70周年を迎えました。
アマチュア合唱団としては日本屈指の歴史を誇るだけでなく
コンクールでの優勝は数え切れない。
県全体の合唱レベルが高く、「合唱王国・福島」
と呼ばれる状況をつくった牽引車の役割も果たして来ました。
福島では新聞の第1面に合唱の記事が載るというお話にビックリ。
左から監査役の村山一郎さん、指揮の高野洋子さん、総務担当の後反直人さん
合唱団創設者でカリスマ的なリーダー兼指揮者だった高野廣治氏が
24年前に亡くなったとき、F.M.C.は大きな危機を迎えました。
指揮者は他所から〝先生〟を呼んで来るのではなく、
団員の中から選ぶという伝統にしたがって指揮を任せられたのは、
まわりのみんなが一致団結して支えて
くれたお陰で乗り越えられました。
福島県民の特徴かもしれないのですが、
オレがオレがという人がいないんです。
昔からの団員も自分の意見を押し付け
ないし、70代の人と20代の人が、友だちのように話せる。
これ、合唱に向いている性格ですよね(笑い)」と話してくださいました。
一方で、現在のアマチュア合唱団特有の問題も深刻。
音大の学生や音楽の先生による合唱団がコンクールを席巻する一方で、
中学・高校の合唱部で上位入賞した子たちは、OB/OGだけの合唱団を作り、
コンクールを目指して練習し、数年で解散してしまう。
F.M.Cのように様々な年齢層の人がいる社会人合唱団には、
なかなか人が集まらないそうです。
入団5年目の後反直人さんは、
「コンクールだけが目標の場合、
歌う曲が限られます。
大会前の2~3ヶ月だけ練習するので、
大曲にも取り組めない。
日常的に集まって、様々な歌を歌う楽しみを彼らは知らない。
僕たちの演奏を聞いたり、練習をみてもらったりすることで、
彼らにも伝えられるような工夫をしたい」と意欲的です。
そのために、今、F.M.C.の皆さんが考えているのは合唱祭。
地元の福島市内や県内の合唱団と音楽を通じて交流し、
勝ち負けに関係なく、歌う喜びを共有したいという夢です。
「合唱連盟は音楽の先生が中心で、
学校のこととコンクールの運営で
手一杯。
でも、F.M.C.が声をかけたら、他の
合唱団も集まってくれると思います。
ネットワークもあるし、信頼もある。
これは、歴史の重みなんだと思います。」
なんだか、面白いことになりそうです!
さて、最後にお話を伺ったのは「いわき地域学會」の副代表幹事、
夏井芳徳さんです。
「いわき地域学會」は、地域全体を研究するために、様々な分野の研究者と
学習意欲のある人たちにより1984年に結成されました。
現在、会員数は約200名。
会員が講師となり毎月開催される市民講座、
年1~2回の地域巡検、今年3年目になるいわき検定のほか、
震災後、地元の研究団体として行った調査・研究活動の成果は、
6年間で3冊の出版物として刊行されました。
上は震災後の調査・研究成果の報告書、下は会員のための機関誌「潮流」
カリスマ的リーダーであった設立者の代表幹事・里見庫男氏が亡くなったとき、
会は一時方向性を失いかけたものの、各ジャンルごとに副代表を出し、
グループ指導制にしたことが効を奏し、今にいたっているそうです。
ただ、設立当初、学校の先生と公務員が中心メンバーだったのが、
近年は学校の先生は雑務に終われるようになり、
公務員は定員抑制があったうえに震災対応を迫られ、
忙しすぎて活動に関わる余裕がなくなっているそうです。
さらに、中心メンバーの高齢化も課題のひとつ。
「地域学のニーズはむしろ高まっているように思います。
ふるさとを失っていたかもしれないという危機感から、
だからこそ、ちゃんと知りたいという思いが生まれたのでしょう。
地域づくりに関わっている若い人たちの団体、
小学校や公民館など、外の団体と一緒に活動することも、
これからは積極的に取り組んでいきたいと思っています。
関わった人の中から、有望な人を会員にしてしまおうという
野望も持っているのですが(笑い)」
と、夏井さん。
2011年の5月、いわき市で夏井さんにお目にかかった折、
震災のことをきちんと記録していく、
今、外部からの研究者がたくさん来ているが、
地元ならではの調査・研究を地道に、息長く続けたいと仰っていました。
有言実行の「いわき地域学會」。
これも、もしや、福島の県民性ではと思ったのでした。