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2018年10月12日
- [中部]
地域文化の未来を考える研究会 IN 富山②
20年30年後の日本に多彩で豊かな地域文化を引き継いでいくためには、
今、何をなすべきかを考える「地域文化の未来を考える研究会」で、
8月25日から27日にかけて富山県を訪ねヒアリング調査を行いました。
「おわら風の盆」前夜祭のステージ公演
2日目の8月26日(日)、高岡市内のホテルでのヒアリング終了後、
富山市の旧八尾町へ。
越中八尾観光会館で「富山県民謡越中八尾おわら保存会」の方に
お話しを伺いました。
正面左から保存会副会長の古川克己さん、渉外部長の山田誠さん
「おわら風の盆」は、旧八尾町の中心部11町で3日間にわたって
行われる風神鎮魂のためのお祭りです。
八尾の人間は、歌いながら生まれるか、踊りながら生まれると言われる
ぐらい、おわらは人々に愛され、生活に染み込んでいるのです。
ところが、昭和40年頃から、哀調をおびた胡弓の音色と優美な踊りが
評判を呼び、祭りが行われる人口5千人余りの地域に、
毎年30万人もの観光客が押し寄せるようになってしまいました。
踊りが見られないという観光客からの苦情。
人が多すぎて危なくて満足に踊れないという町の人たちの不満。
前夜祭や月見のおわらの開催など、祭りの期間以外にも踊りを
見ることができるようにして、観光客の分散化を図っています。
観光客をできるだけ締め出さないで共存しようという努力の裏には、
見てもらうことの喜びとそのために芸を磨こうというプライド、
そして、訪れる人たちに対する八尾の人たちの優しさを強く感じました。
ヒアリング終了後、前夜祭を見学。
その後、富山市内のホテルに宿泊し、
27日(月)はいよいよヒアリング最終日。
午前中は、「全日本チンドンコンクール」の事務局を務める
富山市と富山商工会議所の皆さんをお迎えしました。
左手奥から、富山市観光政策課主事の鏡祐成さん、同振興係長の石黒智一さん、同課長の高橋洋さん。
富山商工会議所産業振興部次長の橋本永徳さん、同地域振興課課長代理の青山茂樹さん、イベント企画会社I.S.K取締役の境井智子さん
1955年、富山県商工会議所と富山市の共催で
全日本チンドンコンクールが始まりました。
市主催のチンドンマン育成講座からアマチュア・チンドングループ
が結成され、アマチュア部門のコンクールも始めたところ、
優勝者の中からプロが続々と誕生。
沈滞しかけていたチンドン業界にも活力を与えました。
コンクール以外にも、町流しやパレードも行い、
富山の春の風物詩として親しまれています。
悩みは、観客の減少です。
往時は沿道を埋め尽くした観客が、お天気が悪い日はまばらに。
スマホでの人気投票による市民参加、子どもチンドンの養成をはじめと
するインスタ映えのするプログラムの検討などのメンバーのアイディア
にも、熱心に耳を傾けてくださいました。
最後は、富山県で最初にサントリー地域文化賞を受賞した
老舗のアマチュア劇団「文芸座」の皆様。
左手奥から、劇団理事の谷井美夫さん、同小泉邦子さん、代表の小泉博さん、
理事・事務局長の舟本幸人さん
文芸座は、1948年結成。
初期は富山県全域での巡回公演に力を入れていました。
1997年、国際アマチュア演劇コンクールでの初優勝以降、
国際アマチュア演劇連盟でも活躍。
小泉代表と舟本事務局長は富山県芸術文化協会の中核としても長年
尽力し、富山県の文化活動が国際的な広がりにも貢献しています。
すでに5大陸での公演を達成していますが、
「そういえば、まだ公演していなかった」と、
昨年は南極大陸での公演も敢行しました。
劇団員の平均年齢が70歳という話になったときの小泉代表の言葉に、
研究会のメンバーは衝撃を受けました。
「もう20数年、新しい劇団員を入れていません。
先のことに責任をもてないですから。
若い人は若い劇団を作ればいい。
けっこういい劇団が出て来ていますよ。」
あまりにも潔く、清清しい。
うーむ、地域文化活動のあり方として、これもアリですね。
富山でのヒアリングの3日間に感じた共通のキーワードは、
義理堅い、粘り強い、優しい、賢い、
そして、人が思いつかないようなことをする独自性。
これは、富山の県民性ですか?