• 事務局通信

2018年11月12日

オックスフォード大学で明治維新をテーマに「グローバルな文脈での日本」セミナーを開催

2018年10月26日に14回目となる「グローバルな文脈での日本」を、オックスフォード大学で開催しました。このプロジェクトは国際的な視点から日本の問題を議論しようと、2012年から開催しています。今回は2016年3月に「医療制度の国際比較」をテーマに開催したのに続き、2度目のオックスフォード大学日産日本問題研究所との共同開催です。明治維新から150年にあたる年に、「明治維新と日本の開国」をテーマとして取り上げ、改めて明治維新の意義や日本における近代の受容について考えました。

Tadokoro, Hikotani, Karube, Locker

最初に、東京大学教授の苅部直氏は'"Long Revolution" in Modern Japan: Rethinking the Search for Civilization in Nineteenth-Century Japan'と題する報告の中で、明治維新は1853年の黒船来航によって突如もたらされた変化だったのではなく、19世紀初頭からはじまる"Long Revolution(長い革命)"であったと従来の解釈に一石を投じました。また当時の日本の知識人は西洋文化を単なる「技術」ではなく、日本の価値観に照らして評価できたからこそ受容したこと、さらにS.ハンチントンが『文明の衝突』の中で諸文明が共存できる道を提起したことにも触れ、グローバル化が進む今、持続的な対話がより重要となっていると語りました。

左から、苅谷剛氏、Sho Konishi氏、渡辺靖氏

続いてオックスフォード大学教授のSho Konishi氏が'The Play of Virtues: A Transnational History of Revolutionary Civil War Losers and Criminals'をテーマに報告し、従来の西洋及び日本中心の歴史解釈の中では忘れ去られている、日本史における革命の敗者と西洋近代史の敗者の思想史を結びつけ、翻訳とトランスナショナルという視点から新しい思想現象史を描きました。そこでは、江戸時代に大坂商人によって設立・運営されていた学問所「懐徳堂」が明治に入って閉鎖された後も、なぜ日本国内のロシア正教会にその徳を中心とした思想精神が受け継がれ、どのように西洋近代の宗教という概念を根本から変え、母国ロシアの正教会が追放したトルストイの思想を日本社会に広めることになったかを解明する興味深い報告が行われました。

人の報告者に対し、参加者から多くの質問がよせられ、活発な質疑応答が行われました。セミナーの最後に、オックスフォード大学教授の苅谷剛彦氏が、今回のセミナーでの議論は、日本の問題を国際的な文脈で再検討するための小さいながらも重要な一歩だったと締めくくりました。

セミナーに引き続き参加者との懇談会が行われ、専門分野を超えた知的会話が和気藹々と行われました。

今回のセミナーの内容は、英語および日本語で公開予定です。

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