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2019年03月28日

  • [東北]

ファンタジーが終わると春が来る!
44年目の「遠野物語ファンタジー」

2019224日、岩手県遠野市で行われた「遠野物語ファンタジー」の第44回公演「天人子(てんにんこ)~まごころの贈り物~」にご招待いただき、拝見してきました。

◆サントリー地域文化賞受賞者プロフィール

https://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_cca/detail/1983t2.html 

「遠野物語ファンタジー(※受賞時活動名「遠野市民の舞台」)」は、遠野で古くから語り継がれてきた民話・伝承を柳田国男がまとめた『遠野物語』から題材を選び、脚本・演出・キャスト・舞台美術・照明・会場整理などの全てを市民が担い、創り上げる舞台です。物語の舞台となる地域は、現遠野市に統合された1町7ヵ村から順番に選ばれ、今回上演される「天人子」は、「天女の羽衣」の昔話でよく知られる、青笹村に伝わる物語です。

遠野駅を降りると、ポストには河童、信号機の上には座敷童子!さすが民話のふるさと、遠野ですね。



会場となる遠野市民センター大ホール。今年は例外的に雪が少ない冬だったそうですが、まだ雪が残っていました。



会場内では過去公演の台本を販売しています。44年間の歴史を感じます。

甘酒コーナーも。もちろんいただき、体の内側から温まります!

オーケストラピットに地元中高生を中心とした演奏・合唱チームが入り、いよいよ開演!


やわらかく品のある方言のセリフ、息のあった掛け合い、物語の舞台である青笹から参加された「青笹町しし踊り保存会」の方々による躍動感ある踊り。。様々な要素が融合された素敵な舞台でした。カーテンコールでは、キャストだけでなく音響・照明・美術などすべてのスタッフに対して大きな拍手が送られ、感動的なフィナーレとなりました。


閉幕の後は楽しい打ち上げです。1年前の脚本募集開始に始まり、直近の数ヶ月は連日の稽古や準備で舞台を創り上げた皆さんによるスピーチ。「小学2年生から参加してきたが、来年は受験で参加できないから今回が最後」というキャスト、「衣装の準備が間に合わずくじけそうになった時に婦人会が救ってくれた」という苦労を振り返る衣装ご担当者、「仕事であまり参加できず申し訳ない。来年はもっと貢献します!」と宣言する大道具ご担当者。それぞれの言葉に周囲から「よくやった!」「頼んだよ!」などの突っ込みが入ります。「修学旅行先に電話がかかってきて出演を打診された」「喫茶店に呼び出されて勧誘された」「飲み会の帰り道でスカウトされた」など、どうやって「巻き込まれたか」のエピソードに笑い声があがり、大変な盛り上がり。


キャストの最年少は小学1年生。大勢の人の前でしっかりとお話しされました。
年齢も職業もさまざまな人々が、職場でも学校でも家庭でもない場所で、上も下もない「仲間」という水平な関係を築き、お互いを大切にする。地域文化の「人を育てる」力を実感しました。


制作委員長の菅原伴耕さん(右)と事務局長の赤坂康紀さん。40年以上続いてきた遠野物語ファンタジーですが、次世代への継承や、より多くの市民の関与など、課題も多いとのこと。若手が中心となってファンタジーを動かして行けるようにと、ベテランの方々はあえて裏方の支援役に回っておられるそうです。お別れ際に「絶対続けるよ!」と熱く宣言して下さいました。


来年の第45回公演は『遠野物語』発刊から110周年、第1回からの累計入場者数が10万人を突破する記念すべき年です。公演翌日からさっそくその脚本の募集が始まりまります。

作る人と見る人が感動を共にする「遠野物語ファンタジー」の舞台を、ぜひ遠野でご覧になってください!

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投稿者(波)

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