- 地域文化ナビ
2019年06月26日
- [北海道]
「市民創作 函館野外劇」今年もまもなく上演!
コロボックル神話の時代から現代まで、函館の地でおこった激動の物語を、特別史跡・五稜郭を舞台に繰り広げる歴史スペクタクル「市民創作 函館野外劇」。出演も運営も全て市民が中心となる舞台づくりによって1993年に「サントリー地域文化賞」を受賞されました。1988年の初演以来毎年夏に上演されており、函館の夏の一大イベントとして市民に親しまれています。
戊辰戦争集結150周年記念となる今年の公演を前に、運営を担う「市民創作 『函館野外劇』の会」の里見泰彦事務局長を訪ねました。
◆サントリー地域文化賞受賞者プロフィール
https://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_cca/detail/1993h1.html
第32回となる今年の公演チラシ。平成30年間は野外劇の歩んできた道のりでもあるのですね。
訪問したときは、すでにメインキャストの練習は開始しており、一部キャストは募集真っ最中でした。事務所のスケジュールボードには予定がびっしり。毎年約200人の市民が舞台に立つそうです。
事務所は野外劇の舞台となる五稜郭のすぐそばです。
写真中央左手の石垣は修復工事を行っていました。「函館野外劇」は従来は公園東南側(写真中央右手)の堀と土手を舞台として使うスケールの大きなものでした。しかし2014年、石垣の一部が崩落した影響で同じ舞台を使用できなくなり、以来現在に至るまで規模を縮小しての実施を余儀なくされています。観客席の数も一時は5分の1になるほどにまで縮小せざるを得ず、また従来のように空間をダイナミックに活用する壮大な演出ができなくなっています。またその前々年の2012年には野外劇の創始者であるフィリップ・グロード神父が亡くなるなど、さまざまな試練に直面してきました。
けれどもこの間、「市民が力を合わせて函館の歴史劇を創るという当初のコンセプトを守りながら、野外劇の灯を絶やさないよう上演し続け、旧舞台への復帰を目指す」という気持ちを支えに、スクリーンと映像を用いた演出の導入、クラウドファンディングを活用して得た資金による設備の改善、世代交代をはかるための組織づくりなど、さまざまな工夫を重ねてきました。
今回の公演でも、野外劇テーマ曲「星のまちHakodate」のCD制作、外国人客が字幕でセリフを理解できるような155ヶ国語対応の「UDトーク」導入など、新たな試みを行います。また、文化財を「ユニークベニュー(Unique Venues=特別な場所)」として会議やイベント等に活用する実践事例として文化庁作成のハンドブックで紹介されたことも、士気を高める後押しとなっているそうです。
(※参考:文化庁「文化財を活用したユニークべニューハンドブック」)
http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/shuppanbutsu/handbook/index.html
新ポスターには戊辰戦争が終結して平和になった世の中で、アイヌ民族などさまざまな時代の人々が手をつなぐ様子を、夜空から榎本武揚や土方歳三ら主要登場人物が見守っているイラストが描かれています。鉄砲や大砲は画面から撤去、平和への願いが込められています。
今年の公演は7月~8月にかけて8回にわたり行われます。夏の夕べ、五稜郭の涼しい風に吹かれながら一夜の夢を見てみませんか。
公演スケジュールや前売り券情報、当日ボランティアの募集など「市民創作 函館野外劇」のウェブサイトをぜひご覧下さい!
◆市民創作 函館野外劇